兼業ラノベ作家志望の乱読研鑚ワナビライフ

底辺作家未満のあがきがここに

書いてみた 掌篇 題名:シュレディンガーのネコミミ

シュレディンガーネコミミ

 

「なあミミ、少しいいか?」

僕は真剣な表情を崩さない様に目の前の少女へとゆっくりと尋ねる。

「……どうしたかニャ? ミミに用事かニャ……?」

その僕の尋ね方に疑問を感じているのか、少し硬質化している声音。茶色の髪の毛の上に乗っかっている同色のネコミミがピコピコと揺れている。尻尾もスカートの裏からふうりふうりと揺れ動いている。両手は腰の前で組まれ、人差し指同士でくにくにといじりあっている。

ミミはキャットピープル。人類の遠い祖先が猫型動物と交わり人類種として交配された第二の人種と言われている。

キャットピープルに対しての強い差別は存在しない。肌の色に関する差別の方が強かったくらいだ。

略称はキャトピ。人類の大親友と言われている。上下関係もない。本当の友人。

ちなみに僕はホモサピエンス、略してホモピだ。

僕はそのキャトピ、さらにいうとキャトピの頭に生えている耳にとても興味があった。

「ミミ……お前のネコミミ、触らせてくれないか!」

「にゃぅうっ……!?」

「いったあああああ!? キャトピに耳を触らせてというのは求婚と同義!あのネコミミ狂いが知らないはずがない!」

「むしろ知っているからこそこの発言には重い想いがあるのよっ! よかったわねっ!ミミッ!」

「くっ……! わたしにもネコミミが生えていればッ……!」

「………………」

「~~~~っ!」

ちなみにここは朝の教室である。

15人ほどいるが、みな遠巻きにこちらを見る視線とざわめきを感じる。

まわりがうるさいが僕に求婚について考えたことは無い。まだ高校生なのだ、どうして結婚まで話が進むのか。

ミミをみると顔を真っ赤にしてプルプル震えていた。そうか、こんな大勢の前で求婚のまねごとをさらしてしまったのだ、羞恥心が存在するならそりゃあ恥ずかしいだろう。大勢の目の前で自分宛てのラブレターを読まれたようなものだ。仲がいいといっても知り合ったのは高校。まだ二年間だ。相手のことをほとんど分かっていないに近い。

ミミの瞳はうるみ、熱をもっている。この反応の理由もまだ分からない。だがまずは謝るべきだ。

「こんなところでわるかった……泣かないでほしい……」

そう言ってあくまで自然を装って、僕より頭一つ小さいミミの頭の上に生えているネコのような耳に手を伸ばし、くにくにする。やわらけぇ……。

「みゅぅぅぅううう~~~!?」

ミミ、鳴く。でも逃げない。尻尾がピンと逆立つ。

「やりやがったっ!? 」

「なんであんな自然にキャトピ(わたし達)のネコミミをなでなでできるのか理解できないわっ!? 下手すると殺されるわよっ!?」

「そこに痺れるあこがれるぅぅううう!」

「あの手で泣かされたキャトピは幾多にも及ぶと言われている」

「まあね、わたしも一度くらいなら撫でられてもいいかもって思ったこともあるけど」

「うん、彼、結構テクニシャンだったよ?」

「――えっあなたほんとに!?」

「――伏兵!?」

まわりの喧騒をよそに僕の右手はネコミミを掴んでいる。きゅーっとネコミミに力が入り僕の指の隙間から逃げていこうとするが、ぎゅっとつまんでいるので決して逃がさない。追加でふにふにくにくにするとミミは妙な声を上げ身をよじり、ネコミミからへにょっと力が抜けるので定期的にくにる。

今だ。

僕は左手をミミの側頭部へと手を近づける。

もうちょっと。もうちょっと。もうちょっ――――。

ホモサピエンスなら本来耳があるところ、キャトピにとっては「何もないところ」。

そこの何もない空間を『掴んだ』。

 

すると僕が右手の指で挟んでいたネコミミが消失した。

 

そして左の指ではホモサピエンスの耳を掴んでいた。

 

「――――あれ?なんでミミの耳触ってるの?」

「おいおいネコミミマイスター! ホモピ(ホモサピエンスの略)の耳も射程圏内になったのかー!」

「ミミっ! チャンスよっ! 彼、ホモピの耳でもいけるみたいだしっ! アピールするのっ!」

「――――」

「あっ……わたしの耳でも……いいの……?」

語尾にニャがついてない。ミミの癖なのだ。キャトピ状態の時の。

 

僕はミミのホモピ耳を離す。するととたんにミミの頭上にキャトピミミが生えているのに気付く。あたかも元から存在して認識から除外されていたように。

 

「もぉぉぉおおお~~~! バカっ! 大馬鹿にゃっ!! 乙女のネコミミをあんなに撫でまわすにゃんて、非常識にゃっ! 耳を触るのはキャトピの常識じゃ、プロポーズなのにゃ……。 こんなのゆるされないにゃぁ……」

最後には泣きそうになっている。

 

にゃの語尾がもどっている。

 

僕はキャトピが人間に特別に迫害されなかったのはここにあるのではないかと思っている。

認識阻害能力。

余りにも別の存在だと敵対してしまう。それを解決するために、相手に擬態のまねごとをすることで紛れ込んでいく。

キャトピ本人が気づいているかいないかの問題があるが、それより問題なのは気づける人間がいないということだった。たぶん。僕以外。

 

「なんでミミの耳を触りたいなんていうんにゃ……ずるいにゃ……」

 

さらに問題なのは、その擬態がただそう見えているだけなのか概念的に書き変わっているのかで大きく変わってくる。

 

もし、キャトピがホモピ状態で子供ができたら、それはホモピでも中身はキャトピなんじゃないか?

じっさい僕たちの中でハーフなんて存在しない。どちらか一方しか産まれない。

確率は半々だと言われている。だから人種的に根絶やしという話にもならない。

でも実はどちらもキャトピだったら。

普通のキャトピとして産まれた子。

ホモピとして産まれてキャトピになれる子。

いつの間にか……それとももうすでにホモピは滅び、この星はキャトピしかいないのではないだろうか……。

 

「いや、よそう、僕の勝手な推測でみんなを混乱させたくない……」

 

もしかしたら、僕がキャトピの見えないホモピ耳を掴んで子供を作るとホモピが産まれるかもしれない。直観が浮かんだ。

 

でも。

 

「にゃぅぅ~~!にゃぅぅうううー!」

 

目の前でにゃうにゃう言ってるミミの、ホモピ耳を掴むとそれはいつものミミではなくなってしまう。

僕は結局、このにゃうにゃう言っているミミが好きなのだ。ああ、人類とかどうでもいいや。

 

 

「ミミにはネコミミをつままれたまま子供を作ってほしい」

僕は真顔でそう言った。

 

「すげぇっ!求婚ふっとばして夫婦生活の話になってんぞ!」

「えっ、ネコミミをつまみながらパコパコとかえっちすぎない!?」

「想像すんなド変態!」

「~~~~~!?」

ミミは最初何を言われたか分からないといった反応だったが、ゆっくりと理解が及ぶと一瞬でゆであがった。

「死にゃ~~~~!!!」

 

僕はゆで蛸ミミの渾身の猫パンチを顔に受けた。僕は気絶した。バタン。第一部完ッ!!

 

 

 

こんなふうに掌編を書いていって小説を書くことにも慣れていきたいです。